夏のひとつきの間にだけ収穫ができ、旬を迎えるアンズ。果肉を楽しむだけでなく、種も杏仁豆腐の香り付けや漢方の材料として遥か昔から食べられています。

人類に馴染みのある果物であるアンズの品種について細かく紹介したいと思います!

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そもそもアンズとは?

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アンズはアジア北西部や中国東部原産の果物です。大まかに2種類の系統に分けられ、それぞれ東洋系と西洋系と呼ばれます。

漢字のごとく東洋系はアジア系、西洋系はヨーロッパ系となんとなくイメージがつくかと思います。

シルクロードを介してヨーロッパやアメリカに伝わり甘く品種改良されたものを西洋系、主に中国で育ち甘く品種改良されていないものを東洋系と呼びます。

東洋系のアンズの品種は、酸味がありジャムやシロップ漬け、果実酒など加工に向いています。

逆に西洋系のアンズの品種は、甘みが強くそのまま生で食べることに向いています。

現在日本国内で育成される東洋系と呼ばれるアンズも、品種改良により甘いアンズの品種が登場してきています。

アンズの品種一覧 ~東洋系~

平和(へいわ)

大正時代に長野県のアンズ園にて偶然発見された純粋な品種です。第一次大戦の終結を記念して名づけられました。

日本のアンズの代表的な品種です。品質がよく評判の良い品種です。

果実は淡い黄緑色で大きさは1個40gほどと小さいサイズです。形はキウイフルーツのような長い球形をしています。

果肉はきめ細やかな繊維を持ち締まりがよく、鮮やかな橙黄色をしています。

酸味と香りがほどよい味わいで、甘さはあまり感じられませんが、ジャムや干しアンズに加工されることが多いですがそのまま食べることも出来ます。

旬は6月下旬から7月上旬です。

昭和(しょうわ)

こちらも平和同様、長野県のアンズ園にて偶然発見された品種です。昭和15年頃に発見された品種の為、昭和と名づけられました。

果実の色は淡い橙黄色で、大きさは1個50g~60gと平均的なサイズで、形は円形です。

果肉は濃い橙黄色で、糖度は9~10%です。酸味が強いですが果肉の締まりはよく、シャキシャキとした食感を楽しむことができます。

果実を二つに割ったシロップ漬けやジャムなどに加工にすると優れた製品となります。

7月上旬に成熟し中旬頃まで出荷されています。

新潟大実(にいがたおおみ)

新潟県原産の純粋品種で、昭和初期から生産されています。

果実の色は淡い橙色で、大きさは1個50g前後の中粒と呼ばれるサイズで、形は球形で玉揃いはよくありません。

果肉は橙黄色で緻密な肉質を持ち締まりがよく、もぎたて完熟の果実はたっぷりの果汁を含み、風味がいいです。

酸味がやや強く生でも食べられますが、ジャム、シロップ漬け、干しアンズに適しています。

収穫は6月下旬から7月上旬に行われています。

信州大実(しんしゅうおおみ)

信州、つまり長野県にて開発された品種です。近年のDNA検査の進歩により、親となる品種は不明とされています。

果実の色は淡い黄色、橙色、朱色へと変わる綺麗なグラデーションをしています。大きさは1個80g~100g前後と他の品種と比べると大きいサイズです。形は綺麗な丸型をしています。

果実のサイズが大きい為厚い果肉を持ちます。完熟したものを食べるときめ細かい繊維と、パパイヤのようなねっとりとした食感を楽しむことができる為、抜群の食べ応えです。酸味はさほど感じず、糖度は10~11%と信山丸と同程度の甘さを持ちます。

熟すにつれてプラムのような甘くさっぱりとした香りが強くなっていきます。生でも食べることができますが、果肉がしっかりしており実崩れしにくい為、シロップ漬けがおすすめです。

7月中旬から完熟期を迎える為、アンズの品種にしては遅めの旬を迎えます。

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山形3号(やまがたさんごう)

山形県原産の純粋品種です。昭和初期から長野県にて生産されています。

果実の色は黄色がかった橙色をしており、大きさは1個60g前後です。形は綺麗な円形で、玉揃いがいいです。果実が裂けることはほとんどなく、花粉量が多い為受粉木としても適しています。

果肉は僅かに淡い色で肉質はやや粗いです。甘みがあるものの酸味が強くい為、加工に向いた品種ではないものの、干しアンズやジャムなどに加工されています。

アンズとしては早い6月下旬から熟し始め、7月初旬頃まで出荷されています。

信山丸(しんざんまる)

山形3号をベースに長野県にて開発され1980年に完成した品種です。

果実の色は濃い橙色で、大きさは40g~50g程度で小さめのサイズです。果実の形は短い楕円形をしており、玉揃いがいいことが特徴です。

昔から作られている品種で甘さと酸味のバランスがよく美味しいアンズですが、育成が難しいこともあり現在育てている農家は少なくなっています。その為「幻のアンズ」という異名を持ちます。

アンズらしい甘酸っぱさと食感を持った品種生食するにも加工するにも最適な品種です。

糖度10%ほどの甘さを持つ果肉は繊維が少ないながらしっかりした肉質で、食べ応えがあります。そして杏仁独特のフルーティーな香りを楽しむことができます。

そのまま食べることもできますが、小粒で果肉がしっかりしている為、シロップやリキュールに果実をまるごと漬けるとより杏仁の風味を楽しむことができます。

主な産地は長野県で、6月下旬~7月上旬に成熟期を迎え、出荷は6月下旬頃から7月下旬にかけて行われます。

幸福丸(こうふくまる)

東洋系と西洋系が混ざった果樹園の中で、自然交雑により生まれた品種です。

果実の色は赤橙色で、陽に当たった部分は紅色に染まります。大きさは1個60g~70gで、形は卵形の為見た目がいいです。しかし果実は裂けやすいです。

果肉の色は橙色で繊維はやや少なく、粗い肉質が特徴です。

西洋系アンズの特性である甘さを持ち、糖度は14~16%と高いです。酸味は少ない為加工だけでなくそのまま食べることにも向いている品種です。

6月下旬頃に熟し、7月初旬まで出荷されています。

信陽(しんよう)

長野県農業関係試験場にて開発された品種で、親となった品種は「山形3号」と「甚四郎」です。

果実の色は赤がかった橙色をしており、陽が当たった部分はやや色づく為綺麗な見た目をしています。

大きさは1個50g~60gほどで、形は楕円型です。色だけでなく玉揃いもいいです。実が裂けることも少ない品種です。

果汁を多く含む果肉の色は橙黄色で、平均的な肉質を持ちます。糖度は10~12%と甘みが強く、酸味は少ないです。渋みや苦味もありません。

加熱処理をすると果肉が崩れやすく加工には不向きなことと甘さがある為、生のまま食べることが多いです。

6月下旬から7月上旬に成熟します。

さつき

長野県のアンズ園にて昭和と平成の選ばれた果実から交配されて誕生したとされる品種です。

果実の色は淡い橙黄色で、大きさは1個50g~60gのサイズです。形は昭和に似て円形ですが、上部分がやや丸いです。

果肉や糖度など昭和と似ている品種です。酸味が強い為シロップ漬けやジャムなどの加工品に向いています。

6月下旬から7月上旬に成熟期を迎えます。

信月(しんげつ)

長野県果樹試験場にて開発された品種です。親となった品種は「新潟大実」と「チルトン」です。果実が裂けにくい品種です。

果実の色は橙黄色で、陽に当たった部分の色づきは少ないです。果実の大きさは1個80gほどと大きめのサイズで、形は短い楕円系です。

果汁を多く含む果肉の色は橙色で、糖度は10%前後とまずまずな甘さを持ち、酸味と渋みは少ないです。仄かな香りを感じることができます。

そのまま生でも食べることができますが、二つに割ってシロップ漬けなどの加工品にも適しています。

アンズにしては遅めの7月の中旬や下旬に熟します。

八助(はちすけ)

古くから青森県や岩手県に自生している品種で、山形県のアンズ園で育てられたのち登録された品種です。青森県の県南地方ではアンズにもかかわらずウメと呼ばれています。

果実の色は淡い橙黄色で、大きさは1個70g~100gと大きいサイズです。

肉厚の果肉は締まりがよくサクッとした食感があり、また甘みも酸味も強い品種の為、ウメのように紫蘇漬けや梅酒用に加工されることがあります。このことからウメと呼ばれるようになりました。

7月上旬から中旬に完熟期を迎えます。

アンズの品種一覧 ~西洋系~

ポイント

ハーコット

生食用に品種改良され、カナダで生まれました。親となった品種は「モールデン604」と「NJAI」です。アンズの中でも特に人気の品種で、1979年(昭和54年)に日本に伝わりました。

果実の色は橙色に赤みがさす色で、大きさは1個80g~100gとアンズの中では大きめのサイズです。果実の形は円形から少し縦長に扁平しており、一見すると枇杷にも思えます。

日本の品種と比べると、酸味が穏やかかつとても甘く、生で食べることに適した品種とされています。

糖度は桃と同じくらいの15%という驚異的な数値を持ち、西洋系のアンズの中でも群を抜いています。果肉は分厚くねっとりとした食感で柔らかく、桃のようなフルーティーな香りを持ちます。

収穫は7月初旬~中旬頃までと短い期間でしか行われません。そしてその1週間~10日間ほどの限られた期間しか市場に出回りません。

また育成が困難なことであることと、果肉が柔らかく痛みやすいことから、日持ちはしません。アンズの中でも高級な部類として知られています。

ゴールドコット

アメリカで開発された品種で、1967年日本に伝わりました。

果実の色は橙色から山吹色と黄色味が強いです。名前にゴールドとつくのも頷けます。

大きさは1個50g~60gで中玉と呼ばれるサイズで、果実の形はまるで小さい梨のような短い楕円型をしています。

病気に耐える力が強いことと、果実が裂けることも少ないことから、家庭で育てやすい品種だといえます。

西洋系の品種の為陶土は高いですが、その甘さの中にも適度な酸味があり、深いコクのある美味しさが特徴的です。

そして香りが強く、もぎたての味を楽しむことができます。果肉の厚みはハーコットと比べると薄めですが、歯ごたえがある為ジューシー感を味わうことができます。

生食用として売られていることがほとんどで、そのまま食べることができる品種です。

収穫は6月下旬~7月中旬にかけて行われます。

サニーコット (おひさまコット)

日本の品種でも生で食べられるほどの甘さを持ち、また量産しやすいアンズを作る為品種改良を重ねた結果、2013年にサニーコットとニコニココットという新しい品種が完成しました。

親となった品種は「アンズ筑波5号」と「ハーコット」です。

果実の色は橙を帯びた淡い黄色で、部分的に朱色になっています。大きさは1個110g~120gほどと大きめのサイズで、形は丸型です。

大きく黄色い果実がなることから、太陽のようなアプリコット、という意味でサニーコットと名づけられました。出願公表後からはおひさまコットと呼ばれています。

品種改良の結果、果実が裂けることが少なく実をつけやすい為、栽培が容易なことが特長となっています。

大粒の為厚い果肉は橙を帯びた淡い黄色で、糖度は約12%とアンズの品種に比べて甘さを持ちつつ、適度な酸味もあります。渋みやえぐみはありません。

果汁を多く含み、柔らかい肉質の為ネクタリンのような瑞々しくジューシーな食べ応えです。

収穫は茨城県では6月下旬から収穫されますが、青森県では7月から行われます。

ニコニコット

サニーコットと同時期に完成した新品種です。両者の1番の違いは酸味の強さで、ニコニコットは酸味を抑えた味わいを持つよう品種改良されました。

親となった品種は「ライバル」と「アンズ筑波5号」です。果実は甘い品種ながら裂けにくく、また樹木1本あたりの収穫量も極めて多い為安定した量を作ることができます。

名前の由来は育てやすくおいしいことから、食べる人も育てた人も笑顔になるアンズとして、ニコニコット(笑顔のにこにことアプリコット)と名づけられました。

果実の色は淡い橙色で、重さは1個90g~100gと比較的大きめのサイズで、形は短い楕円型をしています。

厚めの果肉の色は橙色で緻密な肉質を持っていて、果汁を多く含んでいます。その為ジューシーで食べ応えがあります。

糖度は13%程でイチゴやハーコットと同程度の甘みがあり、酸味はあまり感じられません。

収穫期は6月下旬で、旬は夏です。主な産地は茨城県や長野県です。樹上や収穫後、追熟が進み果実が柔らかくなってしまうスピードが比較的速いためあまり日持ちしません。

まとめ

あまり知られていないと思われますが、上記で紹介したように杏にはたくさんの品種があります。

興味を持たれた方はいろいろな品種を試してみてはいかがでしょうか?

生食にはあまり向いてないとされている杏ですが、おいしいものもたくさんありますのでぜひ食べてみていただきたいです。

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