みなさんは西洋梨と聞いて何を思い浮かべますか?私は真っ先に「ラ・フランス」を思い浮かべてしまいます。

むしろ西洋梨=ラ・フランスというイメージなのですが、実は西洋梨はラ・フランスだけではないんです。それも、かなりの数の品種があるんだとか。

ラ・フランスの他にどんな西洋梨があるのでしょうか?それぞれの品種について特徴を調べてみました。

西洋梨の品種はけっこうある!?

ポイント

オーロラ

オーロラという品種は、1950年、アメリカのニューヨーク州にあるニューヨーク州立農業試験場で「マルゲリト・マリーラ」という品種と「バートレット」という品種の交雑実生から選抜された品種です。

1964年に命名され、その後1983年に日本へ導入されました。

果実の重さは300~400gとずっしり重く、形もしもぶくれのような形をしています。ラ・フランスなどよりも早い9月頃から出回る早生種です。

熟すと果肉は柔らかく、果汁たっぷりの味わいは甘みと酸味のバランスがしっかりとれています。

まだ青いうちにお店に並ぶこともありますが、追熟状態は見た目にわかりやすく黄色くなりますので早めに買ってしまっても心配はありません。

主な産地は山形県で、他にも北海道や長野県、岩手県などでも生産されています。生産量は多くないため、9月に出回ってすぐにお店から姿を消してしまうようです。

グランドチャンピオン

グランドチャンピオンはアメリカのオレゴン州で発見され、1943年に品種登録された西洋梨です。

ゴーハイムという品種の枝分かれで、日本には1950年代に導入されました。

果実の重さは300~350gくらいの中玉で、果汁が多くとろりとした食感に強い甘みと酸味のほどよい調和が特徴的です。薄茶色のサビにおおわれた表皮は、熟すと黄色く変化します。

主な産地は北海道や長野県など。9月中旬から成熟する中生種で、10月中旬頃から11月頃に出荷されます。

シルバーベル

シルバーベルは、1957年に山形県園芸試験場でラ・フランスの自然交雑実生から選抜育成された品種です。

名前の由来は、育成者の「鈴木寅雄」氏の名前から鈴をとってシルバーベルになったそうです。

果実の重さは平均して350~450gとかなり大きく、大玉のものでは800gにもなります。ラ・フランスよりも大きく、細長い形をしています。

果肉は緻密で、ラ・フランスのような西洋梨特有の柔らかい食感を持っています。

シルバーベルはラ・フランスに比べると酸味が強いですが、その酸味が強い甘さに対して程よいアクセントとなっています。

主な産地は山形県ですが、次いで秋田県や岩手県でも生産されています。生産量は山形県がトップですが、実はシルバーベルは秋田県の特産としても知られています。

晩生種の西洋梨なので、10月げ運ごろから収穫が始まります。出荷が始まるのは11月下旬ごろで、12月初旬から1月下旬には食べごろを迎えます。

貯蔵性が高く、2月頃まで出回っています。

ゼネラル・レクラーク

ゼネラル・レクラークは1950年にパリの郊外で発見された品種です。「ドワイエンヌ・デュ・コミス」の自然交雑実生ではないかとされています。

1977年、青森県畑作園芸試験場(現在は県産業技術センターりんご研究所 県南果樹部)によってフランスから日本へ導入されました。

果実の重さは400~600gと大玉です。表面は黄緑色をしていてサビが多く混じっています。

熟すにつれて表面の色が黄色から金色に変化していきます。非常に果実が多く、芳醇な香りや甘みと酸味のバランスが良い濃厚な味わいです。

主な産地はもともと導入された地である青森県です。他に山形県、岩手県、北海道など東北地方で生産されています。

9月下旬から10月上旬にかけて収穫され、果実が硬いうちに収穫されたゼネラル・レクラークは追熟させてから出荷されます。

お店に出回るのは10月上旬ごろから、食べごろはその後の10月下旬から12月頃までとされています。

ドワイエンヌ・デュ・コミス

ドワイエンヌ・デュ・コミスは1849年にフランスはアンジェ地方にあるコミス・ごるてぃコール果樹園で生まれました。明治時代には日本にも導入され、その味わいは定評があります。

一本の木から採れる量が少ないことや病気に弱いことなどによって栽培が非常に難しいため、生産量も少なく希少性のある西洋梨です。

果実の重さは250~350gほど。柔らかい黄緑色をしていますが、追熟させることで黄色く変化します。

果実の味わいは「アイスクリームのように溶けてしまう」と評されるほどのきめ細やかな食感で、甘みと酸味のバランスが絶妙、上品な味わいと芳醇な香りが特徴的です。

主な生産地は山形県、青森県が中心です。生産量が少なく、安定した出荷ができる農園は全国でも少ないようです。

収穫は10月初旬頃から11月頃まで続き、食べごろは10月中旬から11月上旬までです。

生産量が少なく、希少性が高いので旬の時期であっても見かけることはあまりないようです。

バートレット

バートレットは1770年ごろにイギリスで発見された西洋梨です。イギリスでは「ウィリアムズ・ボン・クレティエン」と呼ばれていました。

これを1799年、アメリカのジェームズ・カーター氏が輸入したことでアメリカでの栽培が始まり、エノク・バートレット氏がその土地を取得したことから世間に広められることとなりました。

その際に自身の名前を冠して広めてしまったため、バートレットと呼ばれるようになったそうです。

果実の重さは220~280gくらいで、一般的な西洋梨のイメージに近い洋ナシ型をしています。

黄緑色の表皮は熟すにつれて黄色くなり、おしりの部分が柔らかくなって完熟となります。
はじめは硬い果肉は熟すにつれて滑らかに柔らかくなり、芳醇な香りが強くなります。甘みはあまり強くないので、程よい甘みと酸味を味わうことができます。

果肉の硬さから肉崩れの心配が少なく、缶詰用に加工されることも多い品種です。他、コンポートなど果肉の形を崩したくない調理方法などでも多用されます。

主な産地は北海道、青森県、山形県など。かなり早生種で8月初旬から収穫が始まり、そこから1~3週間追熟させたものが食べごろです。

バラード

バラードは1984年に山形県立園芸試験場で「バートレット」という品種に「ラ・フランス」を交配して選抜育成され、1999年に品種登録された西洋梨です。

なんとこの品種、生まれた園芸試験場は先述した「シルバーベル」という品種と同じなんです。

果実の重さは350~500gで、ラ・フランスより大きいですが色味はバートレットに似ています。びん型の果実はサビが多く黄緑色をしていて、熟すと黄色くなっていきます。

食べごろを迎えると糖度は16~18%にも上がり、対して酸味もあまりないためかなり強い甘みを感じることができます。

柔らかい果肉と強い甘みは、まさしく果実を食べている感覚です。

主な産地は生まれ故郷の山形県で、次いで青森県、北海道など。バラードの収穫は9月下旬から始まり、収穫後に追熟期間を経て食べごろになります。

フレミッシュ・ビューティ

フレミッシュ・ビューティーは1800年代初頭にベルギー、フランダースのアロストの森の中で発見されました。

発見時には「フォンダント・デ・ボア」というフランス語の名前が付けられていますが、その後英語名で「フレミッシュ・ビューティー」と名付けられます。

アメリカで栽培されるようになり、1868年ごろに日本へも導入されます。日本では、日光に当たった面が赤く色づくということから「日面紅」(ひもこ、ひめんこう)という名称がつけられました。

果実の重さは平均450gくらいで、西洋梨の中では大玉の部類に入ります。ふっくらした卵型で、中央付近が膨らんでいます。

黄緑色の表皮は日光に当たった部分が赤く色づき、熟すにつれて変色していきます。果肉は乳白色をしていて、甘みはほどほどに抑えられているため酸味との調和が良い品種です。

主な産地は青森県、秋田県など。フレミッシュ・ビューティーの栽培は気候のために栽培地が限られているため、あまり知名度もなく市場に出回る機会も少ないので希少性が高い品種です。

9月下旬から10月上旬にかけて収穫されます。

プレコース

プレコースはフランスで開発されて1875年ごろに発表された品種です。

明治時代に日本に導入され、プレコースの名前で呼ばれていますがもともとは「ドクトール・ジュール・ギューヨ」というフランスの専門家にちなんだ名前でした。

黄緑色にやや赤みのある表皮をしていて、熟すと黄色く変化します。さっぱりした酸味と甘みに適度な果汁を含み、和梨のような食感も感じられる柔らかさです。

主な産地は青森県や長野県など。出荷時期は8月中旬頃から9月上旬ごろです。

マルゲリット・マリーラ

マルゲリット・マリーラは1874年、フランスのリヨン郊外でM.マリーラ氏によって発見された品種で、そのまま氏の名前が付けられています。

果実の重さは400~800gと西洋梨の中では最大級を誇ります。バランスの良い洋ナシ型をしていて、熟すと黄緑色から黄金色に変色します。

果肉はとてもジューシーで、香りも強めです。糖度が高いわけではない品種ですが、その分酸味が低いので上品な甘みを堪能できます。

主な産地は山形県で、次いで青森県や北海道などで栽培されています。

9月上旬から収穫が始まる早生種で、出荷は9月中旬から10月下旬ごろまでです。出盛りがとても短く、9月下旬から10月中旬までになっています。

メロウリッチ

メロウリッチは1984年、山形県農業総合センター農業生産技術試験において「ミクルマス・ネリス」と「ラ・フランス」を交配した実生から選抜育成された品種です。

2007年に山形県によって登録出願され、2009年に品種登録された山形県のオリジナル品種です。

果実の重さは270~290gで、ラ・フランスとよく似ていますが、少し小ぶりです。全体的にサビが多く、熟すと黄緑色から黄色く変化します。

熟すと糖度は16~17%に上がり、酸味とのバランスで濃厚な味が強くなります。比べるとラ・フランスの方がわずかに滑らかな食感です。

主な産地はオリジナル品種の産地である山形県のみです。9月下旬ごろから収穫が始まる中生種で、10月上旬まで収穫が続きます。

ラ・フランス

ラ・フランスは1864年にフランスのクロード・ブランシェ氏が発見したとされていて、1903年に日本に受粉用として導入されました。

日本では西洋梨として最も多く生産されている品種ですが、本場のフランスでは手間と時間がかかる品種として敬遠されてしまいほとんど栽培されなくなったそうです。

果実の重さは250~300gくらいの中玉です。ごつごつしていて緑~黄緑色の表皮に灰褐色のサビが多く、あまり美しい見た目とは言えません。

しかし、追熟を終えるとまさしく西洋梨へと変貌します。糖度が14~15%まで上がり、とろけるように柔らかい果肉はマスクメロンのような高級感があります。

芳醇な香りととろける味わいで、日本における西洋梨の最高峰の座を獲得しました。

主な生産地は山形県、長野県、岩手県など。山形県では11月1日を統一販売開始日に制定する動きがありましたが、2012年に見送られることになりました。

ブランデーワイン

ブランデーワインは、アメリカのペンシルベニア州で生まれ、明治の初めに日本に導入された品種です。寒さに強いのが特徴です。

果実は小ぶりで、綺麗な緑色の皮と整った形をしています。

熟すにつれて芳醇な香りが強くなりますが、一方で皮の色があまり変化しないため見た目では追熟度合いがわかりにくいのも特徴です。

食べごろの判断は芳醇な香りが強くなったことと、触ってみて柔らかくなっているかどうかで判断します。

主な産地は北海道です。寒さに強いことから北海道での栽培に向いているようです。8月から9月にかけて収穫される早生種の西洋梨です。

ル・レクチェ

ル・レクチェは1882年頃にフランスで交配育成されました。明治36年頃に日本に導入されましたが、当時は栽培が難しかったため自家用の栽培がほとんどだったそうです。

生産量が少なく、甘い芳醇な香りから「幻の西洋梨」や「西洋梨の貴婦人」と呼ばれています。

果実の重さは300~4050gくらいで、表面がややでこぼこしたびん~短びん型をしています。サビが少なく、外見に美しい表皮は熟すと黄緑色から黄色く変化します。

熟すと糖度は16%にも上がり、果汁が多くジューシーな味わいです。酸味と豊かな芳香が特徴です。

主な産地は最初に導入された新潟県で、次いで山形県、長野県など、10月下旬頃から11月にかけて収穫され、その後ひと月ほど追熟させてから市場に出回ります。

まとめ

西洋梨にも様々な種類があって、それぞれ特徴があるんですね。出回る時期も少しずつ違っていますので、いつどの梨が旬なのかは要チェックです。

甘くて柔らかい西洋梨か、少し酸味のある爽やかな西洋梨か、その時の気分によって食べたい梨が見つけられると良いですよね。

ぜひ、これらの情報を参考になさってください。

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